
返事が向けられる相手が、自分ではないとき
誰かと話そうとしたとき、自分が“話し相手として見られていない”と感じる場面があります。
車椅子で暮らす当事者として、日常の中で繰り返し経験してきたことがあります。
たとえば、駅で案内を求めたときや、お店で声をかけたとき。
返ってくる「言葉」や「視線」が、そばにいる付き添いの方(介護士など)に向けられることがあります。
話しかけたのは自分なのに、応じる相手が別の人になる。
そうした場面は、日々の中で静かに起きています。
伝えようとする意思に目を向ける
障害があっても、伝えたいという思いは常にあって、その表現のかたちは人それぞれです。
障害があると一口に言っても、状態や伝え方は人それぞれです。
言葉でのやりとりが難しい方もいますし、発音や発話が不明瞭な場合もあります。
けれど、たとえ最初の言葉が聞き取りづらくても、そこでやりとりを終わらせてしまうのではなく、もう一度尋ねてみる。
時間がかかったとしても、本人に向けたコミュニケーションを続けようとする姿勢は、その人の「伝えたい気持ち」を受け止めることにつながります。
何度でも聞き返してもらって大丈夫です。
多くの当事者は、自分の言葉で伝えたい、理解してほしいという思いをもって、その場にいます。
気づきは、いつもどこかにあるのかもしれません
こうした場面の多くは、相手に悪気があるわけではなく、無意識のうちに起きているものだと思います。
話しかけてよいか迷ったり、どう対応すればよいか分からなかったり。
そうした戸惑いの中で、付き添いの方へ自然と視線が向くことがあるのかもしれません。
ただ、そのとき目の前にいる本人もまた、伝えようとしています。
言葉で、視線で、動きで。
ほんの少し、その方向に意識を向けるだけで、対話のかたちは変わっていくかもしれません。
私自身、当事者でなければ気づけなかったことが、たくさんあると思います。
その経験が、誰かひとりでも多くの人にとっての気づきにつながれば――
そんな思いで、活動や情報発信を続けています。