在宅介護(介助)の現場にふれてみて
4月、かむしぃの介護福祉体験に、当サイトの制作・運用をお願いしている、アトリエ・ライトの渋井さんが参加してくれました。
参加のきっかけについては、次のように話されていました。
「同世代の友人が脳腫瘍を患い、身体を動かせなくなった際に、ほんの少しだけ介助のようなことをした経験があります。40代、50代という年齢でも、突然“介助が必要な立場”になることがあると、実感しました」
「最近では、親の世代のことも含めて“介護”という言葉が身近になりつつあります。一度体験をして、自分や周囲の将来について、考えるきっかけを持ちたいと思いました」
また、普段から私たちスタッフと話す機会があったことも、参加しやすさにつながったようです。
「通常体験などに申し込むのは少し緊張もすると思いますが、知っている方が関わっていて、普段の雰囲気もなんとなく感じていたので、安心して申し込むことができました。」
初めての介護体験で見えてきた戸惑いと気づき
この日は、「障害者の地域生活について」や「障害者福祉制度の歴史」に関する講義のあと、ベッド上での体位変換、車椅子での外出、食事介助といった内容を順に体験してもらいました。
かむしぃが実習で大切にしているのは、「支える側・支えられる側」のどちらも体験すること。
今回も、車椅子では付き添う側と乗る側、食事では介助する側と受ける側、いずれの立場も体験してもらいました。
車椅子や食事介助の場面では、介助を受ける側にまわったときの自分のぎこちなさに、本人も驚いていました。
「人に何かをしてもらうことに不慣れで、自分の方がぎこちなくなってしまいました。
また、介護では相手が主体であり、自分はその「手となり足となる」ような支援をする立場ですが、実際にその感覚をすぐに持つことは難しく、つい友人と一緒に買い物をしているような感覚になっていました。サポートする側の声かけや接し方についても、意識と慣れが必要だと感じました。」
ベッド上での体位変換も、初めての動きに戸惑いながら、何度か挑戦してもらいました。
私自身が受ける側として横になりながら、「最初はうまくできなくて当然。コツをつかんだり、慣れていけば大丈夫」と声をかけつつ、一緒に動きを確認していきました。
動作については、スタッフの吉成とやり取りをしながら、手の動かし方や体の使い方を少しずつ試している様子が見られました。
こうした場では、できる・できないよりも、まずやってみることが大切なのかもしれません。
そんな空気を、今回の体験の中から少しでも感じてもらえていたらと思います。


福祉の情報は必要な人にこそ届いていないかもしれない
体験後にアンケートを書いてもらいました。その中で特に印象的だったのが、「相談の場があるだけでも支えになる」という視点でした。
「家族介護をされている方々に向けた相談会や、介助のコツを共有するような勉強会があると、より心強く感じられるのではと思いました。ご家族の中には、情報を自分から積極的に取りにいける方がいればまだしも、そもそも相談しようという発想すら持てず、限られた情報の中でどうにか対応しようと抱え込んでしまっているご家庭もあるのではないかと思います。」
制度やサービスの情報があっても、それに出会えるかどうか、実際に使えるかどうかは、人によって異なります。
役所やケアマネージャーなど相談先はあっても、状況によっては必要な情報や対応にたどり着くまでが、思っている以上に複雑なこともあります。
だからこそ、一人で抱え込まずに動いていけること、それを社会の側が支えていくことが大切だと感じます。
介護や福祉は「支える・支えられる」だけではない関係性
介護や福祉の現場は、「支える人」と「支えられる人」という一方向の関係だけでは語れない場面が多くあります。
体験中に出た「支えるつもりでいたのに、実際には相手に合わせきれていなかった」といった声からも、関わり方のむずかしさや、対等なやりとりの中で見えてくるものの大きさがうかがえました。
手順や動き方だけでなく、声のかけ方や動くタイミング、相手とのやりとりの中でどう関わるかといった“関係のつくり方”も、介助には欠かせない要素です。
そこに正解はなく、試しながら関わっていく中で、それぞれが少しずつ自分なりの形を見つけていくものなのかもしれません。
「知ってみたい」に応える体験のかたちへ
介護(介助)の体験実習は、特別な準備や知識・経験がなくても参加いただけます。
「介護や福祉について、少し知ってみたい」「いずれ自分にも深く関わるテーマかもしれない」──そんな思いを入り口にしてもらえたらと思っています。
将来、介護(介助)などの福祉の仕事に関わりたいと考えている方や、家族の介護を考える機会がある方にとっては、実際の現場にふれてみるきっかけとして。
また、高校生や大学生など、まだこうした分野を自分のこととして考える機会が少ない方にも、日常のなかにそうした出来事や人との関わりがあるかもしれない──そんな気づきにつながる場になればと思っています。
私たちにとっても、関わり方や伝え方についてヒントをもらえる場面があります。
これからも、かむしぃでは、そうした小さな関心にも応えられるような場づくりを続けていきたいと考えています。

